〔丘々はいまし鋳型を出でしさまして〕

   

   丘々はいまし鋳型を出でしさまして

   いくむらの湯気ぞ漂ひ

   蛇籠のさませし雲のひまより

   白きひかりは射そゝげり

   さてはまた赤き穂なせるすゝきのむらや

   Black Swan の胸衣ひとひら

   雲の原のこなたを過ぎたれ

   ことし緑の段階のいと多ければと

   風景画家ら悦べども

   みのらぬ青き稲の穂の

   まくろき森と森とを埋め

   〔二字空白〕のさまの雲の下に

   うちそよがぬぞうたてけん

   あゝ野をはるに高霧して

   イーハトヴ河

   ましろき波をながすとや