〔十いくつかの夜とひる〕

   

   十いくつかの夜とひる

   患んでもだえてゐた間

   寒くあかるい空気のなかで

   千の芝罘白菜は

   はぢけるまでの砲弾になり

   包頭連の七百は

   立派な麺麭の形になった

   あゝひっそりとしたこの霜の国

   ひっそりとしたすぎなや砂

   しかも向ふでは川がときどき、

   不定な湯気をあちらこちらで爆発させ

   残丘の一列も

   雪を冠って青ぞらに立つ

   病んでゐても

   或ひは死んでしまっても

   かういふ風に川はきれいに流れるのだ

   白菜の膨れた葉脉の間には

   氷の粒が填ってゐて

   緑いろした鎧の片のやうでもある

   

 


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