展勝地

   

           ※

   ほこりの向ふのあんまり青い落葉松(ラリツクス)

   青すぎることは陰うつで却っていやに見える、

   そらはいよいよ白くつめたくて、

   みんなはずゐぶん気が立ってあるいてゐる。

           ※

   風と散漫、風と散漫、

   いまその安山集塊岩の、

   けはしく鋭い崖の上に、

   雲を濾された少しの日光がそゝぎ

   風は頁をひるがへし、

   みんなの踏んで行く砂は、

   天の河のその明るい砂だ。

           ※

   砂の上に雲の影がある。

   それは影ではなくて、

   やっぱり暗い色の砂だ。

   「桜羽場君、そこはだめだ。

    あなたは風邪も引いてるから、

    そんなところに座ってゐると、

    ついぐらぐらして陥ちるかもしれない。

    ははん、

    それは物理的には落ちない筈だけれども、

   〔以下原稿なし〕