一〇八八

     祈り

                  一九二七、八、二〇、

   

   倒れた稲を追ひかけて

   これからもまだ降るといふのか

   一冬鉄道工夫に出たり

   身を切るやうな利金を借りて

   やうやく肥料(こえ)もした稲を

   まだくしゃくしゃに潰さなければならぬのか

   電気会社が

   ひなかも点すこのそらのいろ

   田ごとにしめも張り亘し

   かながらの幣さへたてゝ

   稔りある秋を待つのに

   無心に暗い雨ぐもよ