〔栗の木花さき〕
一九二七、七、七、
栗の木花さき
稲田いちめん青く平らな
イーハトーヴの七月である
洞のやうな眼して
風を見つめるもの……
はんのきと萓の群落
さわやかによしは刈られて
今年も燃えるアイリスの花
またわづかにひかる あざみの花
幾重の山なみに雲たゝなびき
月見草の花瓣萎む
そのひとみのいろ灰いろにしてつゝましく
短く刈られて赤いひげと
風にやつれたおももちは
更に二聯の
精神作用を伴へば
聖者の像ともなる顔である
飯岡山の肩ひらけ
そこから青じろい西の天うかび立つ
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