一〇七九

     〔わたくしが ちゃうどあなたのいまの椅子に居て〕

                  一九二七、七、一、

   

   わたくしが

   ちゃうどあなたのいまの椅子に居て

   あなたがわたくしを訪ねて来られましたとき

        ……アカシヤの枝ゆらゆらゆれる……

   わたくしの云ひましたこと表情しましたことが

   もしかあなたを傷つけはしませんでしたでせうか

        ……崩れて光る夏の雲……

   それは今日わたくしが疲れやつれて

   あなたをたづねて来たのでありますが

   あああなたのことばやおももちは

   いま数倍の強さになって

        ……風も燃え……

   わたくしの胸を刺すのであります

        ……風も燃え

          禾草も燃える……

   

 


次の草稿形態へ→