一〇六九

     〔すがれのち萓を〕

                       五、一五、

   

   すがれのち萓を

   ぎらぎらに

   青ぞらに射る日

        川は銀の

        川は銀の

     恋人のところからひとりつゝましく村の学校に帰って

     彼女は食品化学を勉強してゐるのである

   一点つめたくわたくしの額をうつものは

   青ぞらから来たアルコール製の雨であるか

   竜が持ってきた薄荷油の滴であるか

   青い蠅が一疋

      思想の隅角部を過ぎる