一〇六八

     〔エレキの雲がばしゃばしゃ飛んで〕

                       五、一四、

   

   エレキの雲がばしゃばしゃ飛んで

   一本の杉の枯れた心が

   避雷針とでもいふやうに

   二露里に亘る林のなかに立ってゐる

     こんもりと新芽をふいた白樺の下に

     一つの古いそりが置きすてられる

   

       ……岩手山麓地方の

         ブッシュタイプに就て研究せよ……

       Nymph, Nymphaus, Nymphaea

   羊歯の花を借りてきて

   いっぱいにつけた古い楢の木ででもあるか

   

   雲は黒い尾を曳いて

   しづかにまはりをかけちがふ

   

 


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