〔ひわいろの笹で埋めた嶺線に〕
五、九、
ひわいろの笹で埋めた嶺線に
ぼしゃぼしゃならんだ青ぞらの小松である
その谷がみな蔭になり
その六方石谷みな蔭になり
お辰のうちのすももの花がいっぱいにそこにうかんでゐる
一尺角の木の格子で組みあげた
実に頑丈な木小屋である
下の温泉宿の看板娘は嫁に行き
おとなもこどももあかんぼも
みんないっぱい灼いたりんごを食ったのである
そのときお辰は
黒い絹に赤い縞のはいった
エヂプト風の雪ばかまをはいて
お嫁さんに随いて行ったのである