一〇六一

     〔ひわいろの笹で埋めた嶺線に〕

                       五、九、

   

   ひわいろの笹で埋めた嶺線に

   ぼしゃぼしゃならんだ青ぞらの小松である

   その谷がみな蔭になり

   その六方石谷みな蔭になり

   お辰のうちのすももの花がいっぱいにそこにうかんでゐる

   一尺角の木の格子で組みあげた

   実に頑丈な木小屋である

       下の温泉宿の看板娘は嫁に行き

       おとなもこどももあかんぼも

       みんないっぱい灼いたりんごを食ったのである

   そのときお辰は

   黒い絹に赤い縞のはいった

   エヂプト風の雪ばかまをはいて

   お嫁さんに随いて行ったのである