〔わたくしの汲みあげるバケツが〕
一九二七、三、二三、
わたくしの汲みあげるバケツが
井戸の中の扁菱形の影の中から
たくさんの気泡と
うららかな波をたゝへて
いまアムバアの光のなかにでてくると
そこにひとひらの
-なまめかしい貝-
-ヘリクリサムの花冠-
一ぴきの蛾が落ちてゐる
なめらかに強い水の表面張力から
蛾はいま溺れやうとする
わたくしはこの早い春への突進者を
温んでひかる気海のなかへ掬ひだしてやらう
ほう早くも小さな水けむり
イリデスセンス
春の蛾は水を叩きつけて
飛び立つ
飛び立つ
飛びたつ
Zigzag steerer,desert cheerer.
いまその林の茶褐色の房と
不定形な雲の間を航行する