一〇一一

     〔ひるすぎになってから〕

                  一九二七、三、一九、

   

   ひるすぎになってから

   東のそらはうす甘く赤くなり

   そこにたくさんの黒い実をつけたはんの梢や

   古風な松の森が盛りあがったのです

     ……ひはうつくしい

       孔雀石いろに着飾って

       あえかな雪を横切った……

   みみづくの頭の形した鳥ヶ森もひかり

       テーブルランド テーブルランド

   凍ったその小さな川に沿って

   いくつものさびしい雪のテレースが

   日の裏側を

   木のないとがった岩頸までつゞけば

   天の焦点は雪ぐもの向ふの白い日輪

       つらなる黒い林のはてに

       また亜鉛いろの雪のはてに

       ノスタルヂヤ農学校の

       ほそ長く白い屋根が見える

   

 


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