一〇〇四

     〔今日は一日あかるくにぎやかな雪降りです〕

                  一九二七、三、四、

   

   今日は一日あかるくにぎやかな雪降りです

   ひるすぎてから

   わたくしのうちのまはりを

   巨きな重いあしおとが

   幾度ともなく行きすぎました

   わたくしはそのたびごとに

   もう一年も返事を書かないあなたがたづねて来たのだと

   じぶんでじぶんに教へたのです

   そしてまったく

   それはあなたの またわれわれの足音でした

   なぜならそれは

   いっぱい積んだ梢の雪が

   地面の雪に落ちるのでしたから

   

       雪ふれば昨日のひるのわるひのき

       菩薩すがたにすくと立つかな