〔氷のかけらが〕
一九二七、二、一八、
氷のかけらが
海のプランクトンのやうに
ぴちぴちはねる朝日のなかを
黒いペンキのまだ乾かない
電車が一つしづかに過ぎる
兵隊みたいな赤すじいりの帽子をかぶった電気工夫や
またつゝましくかゞやいてゐる朝の唇
……ハムマアを忘れて来たな……
……向ふには電気炉がない……
江釣子森が暗く濁ったそらのこっちを
白くひかって展開する
そのぶちぶちの杉の木が
虫めがねででも見たやうに
今日は大へん大きく見える
……雪の野原と
ぼそぼそ燃える山の雲……
東は茶いろな松森の向ふに
巨きな白い虹がたつ