一〇〇二

     〔氷のかけらが〕

                  一九二七、二、一八、

   

   氷のかけらが

   海のプランクトンのやうに

   ぴちぴちはねる朝日のなかを

   黒いペンキのまだ乾かない

   電車が一つしづかに過ぎる

   兵隊みたいな赤すじいりの帽子をかぶった電気工夫や

   またつゝましくかゞやいてゐる朝の唇

      ……ハムマアを忘れて来たな……

      ……向ふには電気炉がない……

   江釣子森が暗く濁ったそらのこっちを

   白くひかって展開する

   そのぶちぶちの杉の木が

   虫めがねででも見たやうに

   今日は大へん大きく見える

      ……雪の野原と

        ぼそぼそ燃える山の雲……

   東は茶いろな松森の向ふに

   巨きな白い虹がたつ