蛇踊

   

   こゝから草削(ホウ)をかついで行って

   玉菜畑へ飛び込めば

   何か仕事の推進力と風や陽ざしの混合物

   熱く酸っぱい亜片のために

   二時間半がたちまち過ぎる

   そいつが醒めて

   まはりが白い光の網で消されると

   ぼくはこゝまで戻って来て

   かくのごとくに

   水をごくごく呑むのである

   それなる阿片は宗教または自己陶酔の類ではないと

   管先生への報告のために

   手帳へ書いて置くべきらしい

   ははあ向ふの石場の上に

   お蛇がちゃんとお出ましだ

   この萌え出した柳の枝で

   すこし頭を叩いてやらう

   お蛇も笑って待ってるらしい

   蛇がどんなに笑っても

   やっぱり怒ったやうに見えるのは

   眼の形と眼のまはりの鱗のならびのせいなんださうだ

   こつりとひとつ ぼくは立派な蛇遣ひ

   叩かれてぞろぞろまはる

   はなはだ艶で無器用だ

   しっぽをざらざら鳴らすのは

   「それ響尾蛇に非るも

   蛇はその尾を鳴らすめり」

   ペルシャあたりの格言通り

   それともペルシャがこの格言をもたないならば

   ペルシャに蛇が居なかったか

   格言などを王が歴代いやがったか

   二つのうちであるかもしれん

   さうその姿態(ポーズ)

   「白びかりある攻勢」といふ主題だな

   一つまはって

   桃いろをした口をあく

   怖さはんぶん見栄を切ったといふものだ

   お日様青く滃りだし

   川からしめった風がきて

   蛇はお藪へ

   わたしは畑へお帰りです

   


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