台地

                  一九二八、四、十二、

   

   日が白かったあひだ、

   赤渋を載せたり草の生えたりした、

   一枚一枚の田をわたり

   まがりくねった畔から水路、

   沖積の低みをめぐりあるいて、

   声もかれ眼もぼうとして

   いまこの台地にのぼってくれば

   紺青の山脈は遠く

   松の梢は夕陽にゆらぐ

   あゝ排水や鉄のゲル

   地形日照酸性度

   立地因子は青ざめて

   つかれのなかに乱れて消え

   しづかにわたくしのうしろを来る

   今日の二人の先達は

   この国の古い神々の

   その二はしらのすがたをつくる

   今日は日のなかでしばし高雅の神であり

   あしたは青い山羊となり

   あるとき歪んだ修羅となる

   しかもいま

   松は風に鳴り、

   その針は陽にそよぐとき

   その十字路のわかれの場所で

   衷心この人を礼拝する

   何がそのことをさまたげやうか

   

 


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