一〇七九

     僚友

                  一九二七、七、一、

   

   わたくしがかってあなたがたと

   この方室に卓を並べてゐましたころ、

   たとへば今日のやうな明るくしづかなひるすぎに

      ……窓にはゆらぐアカシヤの枝……

   ちがった思想やちがったなりで

   誰かゞ訪ねて来ましたときは

   わたくしどもはたゞ何げなく眼をも見合せ

   またあるかなし何ともしらず表情し合ひもしたのでしたが

      ……崩れてひかる夏の雲……

   今日わたくしが疲れて弱く

   荒れた耕地やけはしいみんなの瞳を避けて

   おろかにもまたおろかにも

   昨日の安易な住所を慕ひ、

   この方室にたどって来れば、

   まことにあなたがたのことばやおももちは

   あなたがたにあるその十倍の強さになって

      ……風も燃え……

   わたくしの胸をうつのです

      ……風も燃え 禾草も燃える……

   

 


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