一〇三三

     悪意

                  一九二七、四、八、

   

   夜のあひだに吹き寄せられた黒雲が

   朝日に焼けて凄まじく暗い朝になった

   今日の遊園地の設計には

   あの悪魔ふうした雲のへりの

   鼠と赤をつかってやらう

   口をひらいた魚のかたちのアンテリナムか

   いやしいハーデイフロックス

   さういふものを使ってやらう

   食ふものもないこの県で

   あんなところへ百万からの金も入れ

   結局魔窟を拵えるだけだ

   あすこの斜面では

   風もさむく

   陽もいちにち薄いだらうが

   かたくりの花はもうたぶん咲く

   

 


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