一〇三二

     〔あの大もののヨークシャ豚が〕

                  一九二七、四、七、

   

   あの大もののヨークシャ豚が

   けふははげしい金毛(ケ)に変り

   独楽よりひどく傾きながら

   西日をさしてかけてゐる

   かけてゐる

   かけてゐる

   まっ黒な森のヘりに沿って

   まだまっしぐらにかけてゐる

   追ってゐるのは棒をかざして髪もひかる

   日本島の里長のむすめ

   梢(うら)枯れかかった槻の木に

   ぐらぐらゆれてゐるのは夕日

   

   里長が森をぽろっと出る

   なにかむしゃむしゃ食ひながら

   小手をかざしてそらを見る

   

 


   ←前の草稿形態へ

次の草稿形態へ→