一九二七、三、二一、
甲助なら今朝くらいうち綱取へ行ったよ
いっぱいに氷華をつけたはんの群落が
雪の反射の偏光に
あちこちすくすく立ってゐて
遠くでは
ぼうぼうと湯気をあげて
江釣子森が氷醋酸の塊(こご)りのやう
紺の風呂敷をしょって
唐獅子いろの乗馬ずぼんをはいて
親方みたいに手を振って行った
清水野から後藤野を
一人で大股に行くうちはいゝが
向ふへ着けば
撰鉱だか運搬だか
たゞの雑役人夫だからな
もう後藤野へかかったころだ
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