圃道
一九二六、一〇、一〇、
水霜が
みちの草穂にいっぱいで
車輪もきれいに洗はれた
ざんざんざんざん木も藪も鳴ってゐるのは
その重いつめたい雫が
いま落ちてゐる最中なのだ
霧が巨きな塊(こゞり)になって
太陽面を流れてゐる
さっき川から炎のやうにあがってゐた
あのすさまじい湯気のあとだ
気管がひどくぜいぜい云ふ
かういふぜいぜい鳴る胸へ
焼酎をすこし呑みたいと思ひ
ふかした芋をたべたいと思ひ
町に心を残しながら
野菜を売った年老りたちが
みなこの坂を帰ったのだ
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