四〇二

     国道

                  一九二六、一、一四、

   

   風の向ふでぼりぼり音をたてるのは

   並樹の松から薪をとってゐるとこらしい

   いまやめたのは向ふもこっちのけはひをきいてゐるのだらう

   行き過ぎるうちわざと呆けて立ってゐる

   弟は頬も円くてまるでこどもだ

   いかにもぼんやりおれを見る

   いきなり兄貴が竿をかまへて上を見る

   鳥でもねらふ身構へだ

   竿のさきには小さな鎌がついてゐる

   そらは寒いし

   やまはにょきにょき

   この街道の巨きな松も

   盛岡に建つ公会堂の経費のたしに

   請負どもがぢき伐るからな

 

 


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