国道
一九二六、一、一四、
風の向ふでぼりぼり音をたてるのは
並樹の松から薪をとってゐるとこらしい
いまやめたのは向ふもこっちのけはひをきいてゐるのだらう
行き過ぎるうちわざと呆けて立ってゐる
弟は頬も円くてまるでこどもだ
いかにもぼんやりおれを見る
いきなり兄貴が竿をかまへて上を見る
鳥でもねらふ身構へだ
竿のさきには小さな鎌がついてゐる
そらは寒いし
やまはにょきにょき
この街道の巨きな松も
盛岡に建つ公会堂の経費のたしに
請負どもがぢき伐るからな
←前の草稿形態へ