樋番
一九二五、六、一二、
にごって泡だつ苗代の水に
一ぴきのぶりき色した鷺の影が
ぼんやりとして移行しながら
夜どほしの蛙の声のまま
ねむくわびしい朝間になった
……けふもまた雨は降らない……
眼をあげれば わづかにひかる
雲の縞の冴えと
岩鐘の青いたたずみと
(六月は廿日を
七月はなほわがために
三十日をたもちたり)
溝うめ畦はなちを罪と数へる
わたくしは古くからの日本の農民である
……つばめやよしきりや
もう入りみだれて飛んでゐる……
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