二五八

     樋番

                  一九二五、六、一二、

   

   にごって泡だつ苗代の水に

   一ぴきのぶりき色した鷺の影が

   ぼんやりとして移行しながら

   夜どほしの蛙の声のまま

   ねむくわびしい朝間になった

       ……けふもまた雨は降らない……

   眼をあげれば わづかにひかる

   雲の縞の冴えと

   岩鐘の青いたたずみと

         (六月は廿日を

          七月はなほわがために

          三十日をたもちたり)

   溝うめ畦はなちを罪と数へる

   わたくしは古くからの日本の農民である

       ……つばめやよしきりや

         もう入りみだれて飛んでゐる……

 

 


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