三四〇

     瓔珞節

                  一九二五、五、二五、

   

   崖の上ではにはとこが

   月光いろに咲き出すし

   くるみの木には

   まばゆい青や緑金や

   瓔珞がみなかけられる

 

     (悲しさが

      そのきゃらの樹の、

      尖った塔を刈り上げたのだ)

 

   そらでは春の爆鳴銀が

   甘ったるいアルカリイオンを放散し

   鷺やいろいろの巣鳥の紐が

   ぎゅつぎゅつ乱れて通って行く

 

   ぼんやりけぶる紫雲英の花簇と

   茂らうとして、

   まづ赭く灼けた芽をだすかつらの木

 

 


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