清明どきの駅長
一九二五、四、二一、
こごりになった古いひばだの
盛りあがった松ばやしだの
いちどにさあっと青くかはる
かういふ清明どきはです
線路の砂利から紅い練瓦のラムプ小屋から
いぢけて倭(ひく)い防雪林の杉並あたり
ぎらぎらひかるかげらふが
雪でたまった沼気や酸を
せはしくせわしく掃くのです
……手袋はやぶけ
肺臓はロヂウムから代填される……
六列展く春のグランド電柱に
青くわななく金属線が渡されて
碍子もみんなごろごろ鳴れば
馬はそいつを蜂かと思ひ
汽車は触媒の白金を噴いて
線路に沿った黄色な草地のリボンを燃やし
ことしの禾草に加里と燐とをやりながら
なかを走って来るのです