春
一九二五、四、一二、
烈しいかげらふの波のなかを、
紺の麻着た肩はゞひろいわかものが
何かゆっくりはぎしりをして行きすぎる、
どこかの愉快な通商国へ
挨拶をしに出掛けるとでもいふ風だ
……あをあを燃える山の雪……
かれくさもゆれ笹もゆれ
こんがらかった遠くの桑のはたけでは
煙の青い lento もながれ
崖の上ではこどもの凧の尾もひかる
……ひばりの声の遠いのは
そいつがみんな
かげらふの行く高いところで啼くためだ……
ぎゅっぎゅっぎゅっぎゅっはぎしりをして
ひとは林にはいって行く
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