天球図
一九二五、四、二、
黄いろに澱む春の天球を
幾琉の黒雲乱れて流れ
積まれて酸える枕木や
あわただしい植民小屋の屋根の上に
鳥は矢羽のかたちをなしてひるがへり
……風と羽とのそのほのじろい love-bite……
おしまひのしめった古金の二きれを残して
陽は山脉の上のつめたい巻層雲に陥ち
そのつつましい恋びとのことを考へながら
小さな汽車は暮れかゝる古生山地に出発する
……村農ソークラテースのごとくに面皺み……
いよよ潜まるアラゴナイトの天椀を
いくむらよぎる黒雲の列
次の草稿形態へ→