魚舗
一九二五、二、一五、
まづは首尾よく家鴨を締めて
萌黄いろしたその頸を
きれいに撫でて軒に釣り
両手を組んでごちっと鳴らし
店を一ぺん目測し
台のはじから手かぎをとって
あかをと鱈を置き直し
わかめの束を重ねれば
つるした家鴨はぶらぶらゆすれ
土間では鮫の黒肉(み)が凍る
もんぱ帽子に絣の合羽
……(帰命頂礼地蔵尊)
鈴を鳴らしたにせ巡礼に
五厘やらうと五厘をさがし
一銭やって追ひ払ひ
やっと火鉢に戻って来れば
吹雪が飛んで吹雪が飛んで
つるした家鴨ははげしくうごき
鮫の黒肉(み)もあかをも凍る