森林軌道
一九二五、一、二五、
岩手火山がほとんど白いプデングで
裾は岱赭のからまつばやし
それからあとは負性の雪のひろがりで
小松の黒い金米糖が
いちめんばらばらちらばってゐる
……ごろごろとろが鳴ってくる……
……とろがごろごろ鳴ってゐる
わたしは軌道を避けてゐやう……
凍った雲と
まばゆくかすむ日の下で
三つ森の半分には雑木が植り
残りのは白いブリキの紐で飾られる
……そこのまっくろな鎔岩流の刻鏤のなかで
熱した風が黄いろの苹果と結婚した……
吹雪がいきなりひかってのぼり
鳥はピッピッピッピ
一生けん命そこらを縫って
つめたい潮水のなかで叫んでゐる
もうやってきた
赤や黄いろの荒縞を着て
誰もみんな海賊風だ
胴切りされた巨きな楢をつけてゐる