十一月
郊 外
卑しくひかる乱雲が
ときどき凍つた雨をおとし
野原は寒くあかるくて
水路もゆらぎ
穂のない粟の塔も消される
鷹は鱗(うろこ)を片映えさせて
まひるの雲の下底(かてい)を過(よ)ぎり
ひとはちぎれた海藻を着て
煮られた塩の魚(さかな)をおもふ
西はうづまく風の底
紅くたゞれた錦の皺を
つぎつぎ伸びたりつまづいたり
乱積雲のわびしい影が
まなこのかぎり南へ移り
山の向ふの秋田のそらは
かすかに白い雲の髪
毬をかゝげた二本杉
七庚申の石の塚
たちまち山の襞いちめんを
霧が火(ほ)むらに燃えたてば
江釣子森の松むらばかり
黒々として溶け残り
人はむなしい幽霊写真
たゞぼんやりと風を見送る