竜
一九二四、一〇、二九、
穹窿(そら)いっぱいの竜どもが
おもひだしては唾を吐き
その唾凍り
野原は寒くあかるくて
残りの梨実(なし)も洗はれる
……水晶と錦を使ふ東洋風のこの手法(テクニック)……
西は渦巻く雲の白髪の下に
山脉が紅く爛れて燃え
その一一の彫鏤の上を
一つの竜の黒い陰影が
いきなり北へすべって落ちる
……天頂にいま青ぞらの片があらはれ
束が白い光の棒で飾られる……
こんどは西の視野いちめんに
まっしろな氷と霧の火があがる
……おれはまさしく丈け一由旬になってゐる……
江釣子森の岩頸(三字不明)が
黒々として沈んでしまふ