三二四

     

                  一九二四、一〇、二九、

   

   穹窿(そら)いっぱいの竜どもが

   おもひだしては唾を吐き

   その唾凍り

   野原は寒くあかるくて

   残りの梨実(なし)も洗はれる

     ……水晶と錦を使ふ東洋風のこの手法(テクニック)……

   西は渦巻く雲の白髪の下に

   山脉が紅く爛れて燃え

   その一一の彫鏤の上を

   一つの竜の黒い陰影が

   いきなり北へすべって落ちる

     ……天頂にいま青ぞらの片があらはれ

       束が白い光の棒で飾られる……

   こんどは西の視野いちめんに

   まっしろな氷と霧の火があがる

     ……おれはまさしく丈け一由旬になってゐる……

   江釣子森の岩頸(三字不明)

   黒々として沈んでしまふ

 

 


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