昏い秋
一九二四、一〇、四、
雲の鎖のむら立ちや
また木醋を宙に充てたり
はかない悔いのいろを湛えたりするとき
一つの森が風のなかにけむりを吐けば
そんなつめたい白い火(ほ)むらは
北いっぱいに飛んでゐる
わびしい秋も終りになって
楊は堅いブリキにかはり
たいていの濶葉樹のへりも
酸っぱい雨に黄いろにされる
じつに避難でもするつもりなのか
群になったり大きなやつは一疋づつ
鳥はせわしく南へ渡り
ひとは幽霊写真のやうに
白いうつぼの稲田に立って
ただぼんやりと風を見送る
次の草稿形態へ→