アルモン黒(ブラック)
一九二四、一〇、二、
風の息吹きがまた来れば
私の上着は大きな夜の翼になってひるがへる
わづかな水の呟きと
いっそかなしい悔いばかり
劫初の風がまた来れば 一瞬白い水あかり
(待て、おまへは「アルモン黒」だな)
Oh, that horrible pink dots!
Oh, that horrible pink dots!
乱れた鉛の雲の間に
ひどく荒んだ月の死骸があらはれる
それはあるひは風に膨れた大きな白い星なのか
烏が軋り
雨はじめじめ落ちてくる
あゝ電線はさっきから
宙でわたしをうらなってゐたのだ