〔しばらくぼうと西日に向ひ〕
一九二四、九、二七、
しばらくぼうと西日に向ひ
またいそがしくからだをまげて
重ねた粟を束ねだす
こどもらは向ふでわらひ
女たちも一生けん命
古金のはたけに出没する
……崖はいちめん
すすきの花のまっ白な火だ……
こんどはいきなり身構へて
繰るやうにたぐるやうに刈って行く
黝んで濁った赤い粟の稈
《かべ いいいい い
なら いいいい い》
……あんまり萓穂がひかるので
こどもらまでがさわぎだす……
濁って赤い花青素の粟ばたで
ひとはしきりにはたらいてゐる
……風にゆすれる蓼の花
ちぢれて傷む西の雲……
女たちも一生けん命
くらい夕陽の流れを泳ぐ
……萓にとびこむ百舌の群
萓をとびたつ百舌の群……
抱くやうにたぐるやうに刈って行く
黝んで赤い粟の稈
……はたけのへりでは
麻の油緑も一れつ燃える……
《デデッポッポ
デデッポッポ》
……こっちでべつのこどもらが
みちに板など持ちだして
とびこえながらうたってゐる……
はたけの方のこどもらは
もう風や夕陽の遠くへ行ってしまった