風と杉
一九二四、九、六、
杉のいちいちの緑褐の房に
まばゆい白い空がかぶさり
蜂(すがる)は熱いまぶたをうなり
風が吹けば白い建物
……一つの汽笛の Cork-screw ……
銀や痛みやさびしく口をつぐむひと
……それはわたしのやうでもある
白金の毛あるこのけだもののまばゆい焦点……
半分溶けては雀が通り
思ひ出しては風が吹く
……どうもねむられない……
(そらおかあさんを
ねむりのなかに入れておあげ……)
杉の葉のまばゆい残像
ぽつんと白い銀の日輪
……まぶたは熱くオレンヂいろの火は燃える……
(せめて地獄の鬼になれ)
……わたくしの唇は花のやうに咲く……
もいちどまばゆい白日輪
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(ブレンカア)
(こいづ葡萄だな)
……うす赤や黄金……
(おい仕事わたせ
おれの仕事わたせ)
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朱塗のらんかん
(百姓ならべつの仕事もあるだらう
君はもうほんとにこゝに
ひとをばかにして立ってゐるだけだ)
南に向いた銅いろの上半身
髪はちゞれて風にみだれる
印度の力士といふ風だ
それはその巨きな杉の樹神だらうか
あるひは風のひとりだらうか