石塚・
一九二四、五、一八、
日はトパースのかけらをそそぎ
雲は酸敗してつめたくこごえ
ひばりの群はそらいちめんに浮沈する
一本の緑天蚕絨の杉の古木が
南の風に奇矯な枝をそよがせてゐる
その狂ほしい塊りや房の造形は
表面立地や樹の変質によるけれども
またそこに棲む古い鬼神の気癖を稟けて
三つ並んだ樹陰の赤い石塚と共にいまわれわれの所感を外れた
古い宙宇の投影である
(わたくしはなぜ立ってゐるか
立ってゐてはいけない
鏡の面にひとりの鬼神ものぞいてゐる
第一九頁)
およそこのやうに巨大で黒緑な
そんな樹神の集りを考へるなら
わたくしは花巻一方里のあひだに
その七箇所を数へ得る