七八

     虹を来る判事

                  一九二四、四、二七、

 

   例の判事がやってくる   

   すきっと青くやってくる

   今日は春だし一つ和睦をしてやるか

   大きな虹をうしろにしょって

   急いでくるのは感服だ

   鷺のかたちにちゞれた雲の

   そのまっ下をあるいてくるのは気の毒だ

   一つ挨拶してやらう

   あ よせよせ

   もうおれを見て

   片眼をぱっとつぶってやがる

   かあいさうに

   毎日詐欺をしらべたあとで

   鰻を一つ食ふんだらう

   来た来た

   いや、桜の花が日光にすかし出されるのは

   どこか蛙の卵のやうで

   あんまりよくはありませんな

   役場の角を黄金の眼をした大きな青い犬もくる

 

 


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