海蝕台地
一九二四、四、六、
日がおしまひの八分圏(オクタント)にはいってから
そらはすっかり鈍くなり
台地はかすんで優鉢羅華燈(うばらけたう)油の海のやう
……かなしくもまたなつかしく
遍路の春の胸を噛む
求宝航者(シンドバード)の海のいろ……
そこには波がしらの模様に雪ものこれば
いくつものからまつばやしや谷は
あえかなそらのけむりにつゞく
……それはひとつの海蝕台
むかしの海の記念碑である……
たよりなくつけられたそのみちをよぢ
わたくしはこのかなしい夕景のなかに消えていきたい
ぼんやりつめたい四月のしろいそらになりたい