駒ケ岳

   

   弱々しく白いそらにのびあがり

   その無遠慮な火山礫の盛りあがり

   黒く削られたのは熔けたものの古いもの

    (喬木帯灌木帯、苔蘚帯といふやうなことは

     まるっきり偶然のことなんだ。三千六百五十尺)

   いまその赭い岩巓に

   一抹の傘雲がかかる。

      (In the good summer time, In the good summer time;)

   《ごらんなさい。

    その赭いやつの裾野は

    うつくしい木立になって傾斜(スロープ)もやさしく

    黄いろな林道も通ってゐます。》

   「全体その海の色はどうしたんでせう。

   青くもないしあんまり変な色なやうです。」

   「えゝ、それは雲の関係です。」

   何が雲の関係だ。気圧がこんなに高いのに。