冬と銀河ステーション

   

   そらにはちりのやうに小鳥がとび

   かげらふや青いギリシャ文字は

   せはしく野はらの雪に燃えます

   パッセン大街道のひのきからは

   凍ったしづくが燦々(さんさん)と降り

   銀河ステーションの遠方シグナルも

   けさはまっ赤(か)に澱んでゐます

   川はどんどん氷(ザエ)を流してゐるのに

   みんなは生(なま)ゴムの長靴をはき

   狐や犬の毛皮を着て

   陶器の露店をひやかしたり

   ぶらさがった章魚(たこ)を品さだめしたりする

   あのにぎやかな土沢の冬の市日(いちび)です

   (はんの木とまばゆい雲のアルコホル

    あすこにやどりぎの黄金のゴールが

    さめざめとしてひかってもいい)

   あゝ Josef Pasternack の指揮する

   この冬の銀河軽便鉄道は

   幾重のあえかな氷をくぐり

   (九字不明)赤い碍子と松の森)

   (九字不明)ルをぶらさげて

   (九字不明)張り

   (八字不明)椀の下

   (六字不明)の台地を急ぐもの

   (五字不明)スの氷の羊歯は

   (四字不明)ん白い湯気にかはる)

   (二字不明)セン大街道のひのきから

   しづくは燃えていちめんに降り

   はねあがる青い小枝や

   まばゆいいろいろのスペクトルや

   もうまるで市場のやうな盛んな取引です

 

 


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