滝沢野

   

   光波(くわうは)測定(そくてい)の誤差(ごさ)から

   から松のしんは徒長(とちやう)

   柏の木の烏瓜(からすうり)ランタン

     (ひるの鳥は曠野に啼き

      あざみは青い棘に遷(うつ)る)

   太陽が梢に発射するとき

   暗い林の入口にひとりただずむものは

   四角な若い樺の木で

   Green Dwarf といふ品種

   日光のために燃え尽きさうになりながら

   燃えきらず青くけむるその木

   羽虫は一疋づつ光り

   鞍掛や銀の錯乱

     (寛政十一年は百二十年前です)

   そらの魚の涎(よだ)れはふりかかり

   天末線(スカイライン)の恐ろしさ

 

 


   ←前の草稿形態へ