習作

   

   キンキン光る

   西班尼(すぱにあ)製です

     (つめくさ つめくさ)

   こんな舶来の草地でなら

   黒砂糖のやうな甘つたるい声で唄つてもいい

   と┃ また鞭をもち赤い上着を着てもいい
    ┃
   ら┃ ふくふくしてあたたかだ
    ┃
   よ┃ 野ばらが咲いてゐる 白い花
    ┃
   と┃ 秋には熟したいちごにもなり
    ┃
   す┃ 硝子のやうな実にもなる野ばらの花だ
    ┃
   れ┃  立ちどまりたいが立ちどまらない
    ┃
   ば┃ とにかく花が白くて足なが蜂のかたちなのだ
    ┃
   そ┃ みきは黒くて黒檀(こくたん)まがひ
    ┃
   の┃  (あたまの奥のキンキン光つて痛いもや)
    ┃
   手┃ このやぶはずゐぶんよく据えつけられてゐると
    ┃
   か┃ かんがへたのはすぐこの上だ
    ┃
   ら┃ じつさい岩のやうに
    ┃
   こ┃ 船のやうに
    ┃
   と┃ 据えつけられてゐたのだから
    ┃
   り┃ ……仕方ない
    ┃
   は┃ ほうこの麦の間に何を播いたんだ
    ┃
   そ┃ すぎなだ
    ┃
   ら┃ すぎなを麦の間作ですか
    ┃
   へ┃ 柘植(つげ)さんが
    ┃
   と┃ ひやかしに云つてゐるやうな
    ┃
   ん┃ そんな口調(くちやう)がちやんとひとり
    ┃
   で┃ 私の中に棲んでゐる
    ┃
   行┃ 和賀(わが)の混(こ)んだ松並木のときだつて
    ┃
   く┃ さうだ

   

 


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(宮澤家本は手入れなし)