丘の眩惑

   

   ひとかけづつきれいにひかりながら

   そらから雪はしづんでくる

   電(でん)しんばしらの影の藍靛(インデイゴ)

   ぎらぎらの丘の照りかへし

   

     その旅人の合羽(かつぱ)のはじが

     どこかの風に鋭く截られて来たことは

     一千八百十年代(だい)

     佐野喜の版に至当する

   

   野はらのはてはシベリヤの天末(まつ)

   土耳古玉製(ぎよくせい)玲瓏(れいらう)のつぎ目も光り

       (お日さまは

        そらの遠くで白い火を

        どしどしお焚きなさいます)

   笹の雪が

   燃え落ちる、燃え落ちる

   

 

 


   注:本文3行目[藍てん]の[てん]は、ヘン[靑]ツクリ[定]。

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