〔夕陽は青めりかの山裾に〕

   

   夕陽は青めりかの山裾に

   ひろ野はくらめりま夏の雲に

   かの町はるかの地平に消えて

   おもかげほがらにわらひは遠し

   

   ふたりぞたゞのみさちありなんと

   おもへば世界はあまりに暗く

   かのひとまことにさちありなんと

   まさしくねがへばこころはあかし

   

   いざ起てまことのをのこの恋に

   もの云ひもの読み苹果を喰める

   ひとびとまことのさちならざれば

   まことのねがひは充ちしにあらぬ

   

   夕陽は青みて木立はひかり

   をちこちながるゝ草取うたや

   いましものびたつ稲田の氈に

   ひとびと汗してなほはたらけり