〔われはダルケを名乗れるものと〕

   

   われはダルケを名乗れるものと

   つめたく最后のわかれを交はし

   閲覧室の三階より、

   白き砂をはるかにたどるこゝちにて

   その地下室に下り来り

   かたみに湯と水とを呑めり

   そのとき瓦斯のマントルはやぶれ

   焔は葱の華なせば

   網膜半ば奪はれて

   その洞黒く錯乱せりし

   

   かくてぞわれはその文に

   ダルケと名乗る哲人と

   永久(とは)のわかれをなせるなり