不軽菩薩

   

   あらめの衣身にまとひ

   城より城をへめぐりつ

   上慢四衆の人ごとに

   菩薩は礼をなしたまふ

   

    (われは不軽ぞかれは慢

     こは無明なりしかもあれ

     いましも展く法性と

     菩薩は礼をなし給ふ)

   

   われ汝等を尊敬す

   敢て軽賤なさざるは

   汝等作仏せん故と

   菩薩は礼をなし給ふ

   

    (こゝにわれなくかれもなし

     たゞ一乗の法界ぞ

     法界をこそ拝すれと

     菩薩は礼をなし給ふ)

   

   この無智の比丘いづちより

   来りてわれを軽しむや

   

   もとよりわれは作仏せん

   凡愚の輩をおしなべて

   われに授記する非礼さよ

   あるは怒りてむちうちぬ