秘境

   

   漢子 称して秘処といふ

   その崖上にたどりしに

   樺柏に囲まれて

   ほうきだけこそうち群れぬ

   

   漢子 首巾をきと結ひて

   黄ばめるものは熟したり

   なはそを集へわれはたゞ

   白きを得んと気おひ云ふ

   

   漢子(をのこ)(くろ)き双の脚

   大コムパスのさまなして

   草地の黄金をみだるれば

   峯の火口に風鳴りぬ

   

   漢子は蕈を山と負ひ

   首巾をやゝにめぐらしつ

   東に青き野をのぞみ

   にと笑みにつゝ先立ちぬ