百合を堀る

   

   百合堀ると  唐鍬(トガ)をかたぎつ

   ひと恋ひて  林に行けば

   濁り田に   白き日輪

   くるほしく  うつりゆれたる

   

   友らみな   大都のなかに

   入学の    試験するらん

   われはしも  身はうち疾みて

   こゝろはも  恋に疲れぬ

   

   森のはて   いづくにかあれ

   子ら云へる  声ほのかにて

   はるかなる  地平のあたり

   汽車の音   行きわぶごとし

   

   このまひる  鳩のまねして、

   松森の    うす日のなかに、

   いとちさき  百合のうろこを、

   索めたる   われぞさびしき