〔最も親しき友らにさへこれを秘して〕

   

   最も親しき友らにさへこれを秘して

   ふたゝびひとりわがあえぎ悩めるに

   不純の想を包みて病を問ふと名をかりて

   あるべきならぬなが夢の

     (まことにあらぬ夢なれや

      われに属する財はなく

      わが身は病と戦ひつ

      辛く業をばなしけるを)

   あらゆる詐術の成らざりしより

   我を呪ひて殺さんとするか

   然らば記せよ

   女と思ひて今日までは許しても来つれ

   今や生くるも死するも

   なんぢが曲意非礼を忘れじ

   もしなほなれに

   一分反省の心あらば

   ふたゝびわが名を人に言はず

   たゞひたすらにかの大曼荼羅のおん前にして

   この野の福祉を祈りつゝ

   なべてこの野にたつきせん

   名なきをみなのあらんごと

   こゝろすなほに生きよかし