〔洪積の台のはてなる〕
洪積の台のはてなる
一ひらの赤き粘土地
桐の群白くひかれど
枝しげくたけ低ければ
鍛冶町の米屋五助は
今日も来て灰を与へぬ。
かなたにてきらめく川や
さてはまた遠山の雪
その枝にからすとまれば
ざんざんと実はうちゆるゝ
このときに教諭白藤
灰いろのイムバネス着て
いぶかしく五助をながめ
粘土地をよこぎりてくる