〔霧降る萓の細みちに〕

   

   霧降る萓の細みちに

   われをいぶかり腕組める

   なはたくましき漢子かな

   白き上着はよそへども

   ひそに醸せるなが酒を

   うち索めたるわれならず

   はがねの槌は手にあれど

   ながしづかなる山畑に

   銅を探らんわれならず

   検土の杖はになへども

   四方にすだけるむらどりの

   一羽もために落ちざらん

   土をけみして(つちかひ)

   企画をなさんつとめのみ

   さあればなれよ高萓の

   群うち縫えるこのみちを

   わがためにこそひらけかし

   権現山のいたゞきの

   黒き巌は何やらん

   霧の中より光り出づるを